未来予想図


学生時代にとっても厳しい教授の授業があったのですが。

その教授、木曜の1限目にしか講義をしてくれず。

前期のみで、しかも必須。

遅刻は入室禁止、居眠り退場、出欠は講義終了後。

後ろから2列目の隅の席で静かに寝ていると、

「君、昨日バイトは何時までだったのかな」

なんともやさしいお声がけ。

「はい、今朝の3時まででした」

「はい、退場」

この1回が、生死を分けるのです。

いくら試験が出来ても、出席ポイントが1ポイントでも足りないと

単位をいただけません。

2年で落とし、3年で落とし。

4年では、卒研とこの必須1単位だけ。

出席は足りていたけど、2年間も受けてる講義だからと舐めてかかったら

試験で、3点足りなかった。

金属工学の教授の研究室に、懇願しに行くこと10回。

ついにレポート提出で、なんとか折り合いをつけていただくことに

成功。

その時の課題が「マルテンサイト変態の未来予想図」

ナンノこっちゃと思うかもしれませんが。

炭素鋼は、温度や時間や圧力をかけることによって性質が変化するのですが

その技術の将来的な利用方法を考えて見なさいというような感じでしょうか。

古くは、日本刀の焼き入れや最近では形状記憶合金などにも使われるのです。

そうそう、ブラジャーのワイヤーもその一つ。

どのようなレポートを提出したかは覚えていませんが、100ページ以上書いたのは、確かです。

まー直ぐにゴミ箱に捨てられたのでしょうけど。


よほどレポートに苦労したのか、未だに夜中繁華街でイカツイお兄さんの

「このヤロー、焼き入れんぞー」なんていう声が遠くから聞こえると

焼入れ→マルテンサイト変態→レポート100枚


ヒェ〜

誰か助けてーってな、気持ちになるのです。

人間誰でもトラウマの1つや2つあるものです、きっと。