井戸端

外から、話し声が聞こえる。

.....お宅のお兄ちゃん最近見ないけど、どうかした?

.....家出したまま帰ってこないの。

.....捜索願は出したの?

.....いいの、いいの。

私は行き先を知っている。

別に家出ではない。

おじいちゃんの家で暮らすことになっただけ。

危ない冗談なのか、開き直ってしまっているのか、頭がやられたか。

普通は体裁をつくろって、良いほうの嘘をつくだろうと考えるのだが

この方の場合、最悪の嘘をつく。

自分への世間の目=子供への世間の目。

なのに。