【正論】衆議院議員、弁護士 稲田朋美 空港施設の外資規制は必要

2008.2.27 02:47

■「国民の安全」確保がやはり優先

 ≪自民、閣内でも対立≫

 空港会社の外資規制問題が混迷している。これを構造改革派と族議員の路線対立というように単純化してはいけない。日本の空港の安全ひいては国の安全保障の問題である。早ければ来年株式上場される予定の成田国際空港会社や羽田のターミナルビルを運営する日本空港ビルデングについて、外資保有割合を3分の1未満に抑えるのが今回の空港整備法の改正であるが、自民党内や閣内でも反対派と賛成派が真っ向対立している。

 反対派の主な理由は「外資を認めなければ、日本市場は閉鎖的との誤ったメッセージになる」「外資が悪く、国内資本は良いというのは差別だ」「国土交通省外資規制をするのは天下り先確保だ」などである。

 しかし、この外資規制は「誤ったメッセージ」どころか、日本が危機管理面でまっとうな国であるという「正しいメッセージ」なのだ。空港の外資規制をすれば「オープンでない」というのなら、空港を公的機関が設置管理する米国も、政府が空港株の68%を保有するフランスもいずれも「オープンでない」ことになる。

 外資規制が全くないのは英国、デンマーク、イタリア、ベルギーくらいだ。英国のヒースロー空港は93%の株をスペイン資本が買収し、株の上場をやめた。もし、成田空港を共産国の政府系ファンドが買収し上場を廃止したらどうなるのか。考えただけでも不安になる。

 ≪オープンにも限度が≫

 空港ビルは商業施設だから安全保障をうんぬんする必要はないという意見もある。しかし、空港ビルは単なるショッピングセンターではない。羽田や成田の空港ビルは世界に開かれている。もし、空港ビルに秘密の抜け道が作られたら、毒入り餃子テロは防げない。滑走路や管制塔だけが空港ではなく、入国管理や検疫、荷物検査関連の施設の入る空港ビルも一体となって、空港なのである。しかも成田の空港会社には滑走路も含まれている。

 さらに「外資規制してもオウム真理教のような悪意の国内集団には意味がない」といった主張だが、オウムから守れないから外資規制は不必要というのは詭弁(きべん)であり、論理の飛躍だ。また国益という観点を外資には期待できないし、期待すべきでもないから、オープンにする限度(枠)を決めるだけのことである。

 外資規制ではなく、一定の悪い行いを規制する「行為規制」を唱える論者もいる。だが、わが国では行為規制は効果的ではない。権限のある官庁に勇気がないからだ。そのことは証券取引規制たとえばホリエモン村上ファンドの株取引でも明らかになった。すべての悪い行いを事前に列挙することは不可能だから、個別の行為規制では悪意の確信犯には無力である。証券行政では行為規制が効かなくても安全保障上は致命傷にならない。しかし空港ビルではそうはいかない。行為規制だけで空港の安全を守れというのは無責任である。

 ≪外為法の適用も無力≫

 それでは外為法の事前届出制度を適用する案はどうか。外為法では、一定業種について、外国投資家による株式の10%以上の対内直接投資が「国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来す」等のおそれがある場合には、事前審査をして投資の変更、中止を勧告、命令できる。これを空港会社に適用するというのである。

 しかし外為法のこの規定を使って勧告、命令した例は一つもない。現在、電力大手Jパワーの株式9・9%をもつ英系投資ファンドが20%までの買い増しを届け出て、政府の対応が注目されている。

 メッセージ性という点では外資規制と同じだが、どれほどの効果をもつか疑問だし、9%を積み上げればすべての株式が外資に買収されることもある。投資する側としても、こうした包括規定で投資を阻害される危険があることの方が外資規制(3分の1は外資無条件オープン)よりも不透明である。

 さらに、役人の天下り外資規制は別の次元の問題である。たとえ天下りがあっても、安全保障上必要とあれば外資規制するのが国益だからである。

 最後に、なんでもかんでも民営化、規制緩和、競争原理がよいという風潮を見直す必要がある。確かに、こうした価値観は経営効率化や財政健全化には大切かもしれないが、取引次元の競争、効率、価格がすべてでない分野がある。家族間には競争原理は持ち込めない。食糧自給の分野でも競争だけがすべてではない。国家基幹インフラの空港もまさしくその一分野なのである。(いなだ ともみ)

どっちが正しいかではなく、どっちが今の日本に必要あるいは不必要かではないのかな。
外資だけではなく、外国企業の参入や入札をことごとく拒み続けているのつてどうなのでしょう。
今度は日本が世界から拒まれる。というかもうNOを突きつけられているんじゃないの。