5月31日懇談会

保岡興治衆議院議員の発言要旨

 貸金業制度問題に取り組んだ経緯
昭和五十四年、私は現在の小泉純一郎首相から引き継ぐ形で、当時の大蔵政務次官に就任した。その当時、「サラ金問題」が社会問題になりつつあった。その後、昭和五十八年には議員立法の形で貸金業規制法が成立し、出資法の上限金利を段階的に引き下げるといった、新しい貸金業制度の枠組み作りに当事者として関わった経緯がある。
その後、商工ローンヤミ金融などの問題が起こる度に、貸金業者金利を下げ、行為・参入規制を通じて新たな制度的枠組みを整えてきたつもりではあったが、その間、ヤミ金を原因とした被害は一同に減らなかった。そこでこのような社会問題がない時期に改めて勉強し直すことで、銀行では借りることができない庶民のニーズにどのように応えていくべきかを冷静に議論したいというのが、私の長年の思いであった。
従来、問題が起こるたびに対処療法的な政策がとられてきたが、その結果、銀行以外の資金需要や貸金業の実態をしっかり踏まえることもなく制度設計がなされてきた。その時々の政策的対応はそれなりの効果を発揮はしたが、経済全体における消費者金融のあり方の総合的な検討も先送り、ヤミ金被害や悲惨な多重債務者の根本的な解決とはなり得なかった。
景気は現在、落ち着きを見せている。増勢にあった自己破産者数も昨年行こう、減少に転じた。この際、冷静に問題の本質を見極め、対策を性格にとっていくべきではないか。
 バランスのとれた健全な市場が必要
銀行から借りれない人たちの資金ニーズというのは、昔から変わらず厳然としてある。そのようなリスクの高い人たちが安心して借りられる市場を作ってあげることは、決定的に重要なことだ。実態を踏まえよく研究した上で、健全な市場を用意することを検討しなければならない。
健全な貸金業者ヤミ金融との差別化を図るには、例えば「マル適マーク」などが考えられる。参入規制を強化すると同時に参入が認められた人には、信用情報の利用などを義務付け、違法な取立てを禁ずる。それとともに、貸倒れリスクに応じて金利を設定できる道は与えておく必要があるだろう。ある程度の金利をとることを認めた上で、しっかりとルールは守ってもらい、できなければ退場してもらう。
最近、大手業者は五年間で二百五十臆円をかけてカウンセリング活動などを行うことを発表しているが、多重債務者の救済制度としては法律扶助制度もある。十月からは弁護士会の協力により日本司法センターが始まる。コストがかかるのであれば、貸金業業界に協力していただくなどして、多重債務者の救済に向けては、総合的な努力を尽くす必要があるだろう。
弁護士会などでは、クレーゾーン金利を廃止し、出資法上限金利の引き下げを強く求めているが、それでは高リスクの人の需要に応えられない問題が出てくる。全体がよい方向に向うように総合的に制度設計していくべきだ。
貸金業に関して、金融庁でもその全貌を把握してはいない。借り手もプライベートな事情があることから余り自身のことは明らかにしたがらない。つまり、ほとんどオープンになっていないのが実際だ。
経済生活上、銀行から借りられない分野の重要性は高い。そこにフォーカスして状況を把握する必要がある。貸金業者でも、自らの実態をよく把握して、それらを公表していく義務があるのではないか。
 金利問題等への基本的な考え方
制度を複雑にしないためにもグレーゾーンは撤廃した方がいいだろう。金利のあり方については、出資法と利息制限法を合わせるという議論ではなく、リスクを正常にとれる業界になれば、少し金利に幅があってもいいのではないか。過酷な回収がなくなれば、借り手は安心して借りることができる。そのような仕組みを構築するために、貸金業界の健全な部分を囲い込んで、自ら管理できるようにするなど、消費者の期待に応える仕組みを創るべく、今後の議論を通じてしっかりと考えてみたい。
全て銀行だけで対応できればいいのだが、社会生活・経済の中では、どうしても急にお金が必要な場面が出てくる。事実、グレーゾーン金利の中で多額の金額が動いている事実はそれを物語る。そこから派生するヤミ金被害者を予防・救済する仕組みを模索して、完成度の高い制度設計をしていかなければならないが、一方で、資金が必要な人たちが安心して借りられる環境を作らないと、それは信用収縮や借り手を違法な金融へ追いやることにつながりかねない。貸金業の問題を金利の面で答えを出す前に、国民経済・生活に与える影響を十分踏まえて慎重に検討する必要もある。私は社会問題になっている部分でまずは手段を尽くして検討し、その上で最終的にどのような金利なら健全に働くかを最後に考えればいいと見ている。
 法改正に向けての見通し
法改正については、政府の金融庁懇談会での議論と、自民党における金融調査委員会の「貸金業に関する小委員会」での検討を踏まえ、議員立法の形で提案することになると思う。双方で協議した上で、基本的な部分は一致させた後に提案することになるのではないか。
貸金業を巡る問題は社会問題になっているため、できるだけ答えを急ぐ必要はあるが、拙速は良くない。
この機会に十二分に実態を前提にした上で、正しい制度設計を作るよう努力責任があると考えている。
改正法案は次の臨時国会に提出されるというのが共通認識になっているが、現時点でどういう状況下で開かれるのかはわからない。
臨時国会への法案提出は、あくまでも目標として、政治的には全力を捧げて答えを求めていくことになるのだろう。
だが、物事には順序がある。時間に追われて、問題を積み残すような拙速な議論はさけるべきだ。
 
             日本金融新聞より

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けどその若手、きちんと夜間高校通って2年になります。卒業まであと2年。
がんばれー。