知ってた?

今年の春に書いた、お客様の兄弟が認知症になって都内でたおれて入院してしまったので、その方が住んでいた所謂ゴミ屋敷の掃除業者を探してほしいという依頼の続編。

 

私が依頼したのは、埼玉県K市の不動産屋さん。

ここの社長とは20年の付き合いで、世話好き75歳。

 

とにかく家を売買するためだったら、なんでも相談のりますよ的な。

なので「いやー、任せてくださいー」

 

ただこの社長でも、一筋縄ではいかなかった。

なにせ、認知症

入院中。

コロナ禍。

兄弟3人いるが、援助する気なし。

 

掃除してもいいが、どうやって費用をもらうのか。

 

その方のお兄さんと入院している病院へ面会にいくこと10回。

ゴミを掃除するだけではなくて、家を売って介護施設で暮らしたい。

らしい。

その認知症の弟さんの口癖は「金ならあるよー」。

 

独身で大手で働いていた弟。

どこかにあるのだろうけど、今現在の入院費も支払えないでいる。

 

社長は、市役所に保護を申請して病院代を賄うことが出来たのは7月。

8月末までには、施設を見つけて病院を出なければいけない。

 

兄は千葉県の海が見える、ちょっとお高めの施設入所を決めてきてしまう。

入所の契約金は、兄貴が立て替えた。

 

さあこれから兄と社長の宝探しが、ゴミ屋敷で始まった。

業者が来てしまったら、容赦なく捨てられてしまうから。

まる2日。吐き気をこらえてついに見つけた。

3冊の通帳とカード。

 

なんと合計金額は、7千万を超えてる。

けど、本人が認知症では下ろすこともできない。

社長も半分諦めて、後見人を探して裁判手続きを考えていた。

 

家を売買できなくても、業者に掃除代金を支払わないといけない。

そして8月末を迎えてしまう。

社長と兄が本人を病院に迎えに行き、3人で千葉の施設に向かうため海沿いの道を

走っていた時である。

 

弟が、覚醒した。

あきらかに、意思がはっきりしだした。

 

社長と兄は、今しかないと。

施設に時間がかなり遅れることを伝え、3つの銀行を回ることに。

きちんと本人がお金をおろし、掃除代金と施設の入所金をその場で

支払った。そして売買契約書にもサインして。

 

夕刻、見知らぬ施設に入った途端またしても元の状態にもどってしまったらしい。

 

しかし、十分な蓄えと年金でまあ、安心安心。

 

ところがである。

1か月後に市役所から保護費の返還請求が届く。

600万に近い金額。

兄は、当時健康保険証を持っていたのだから3割負担でいいはずだと怒っている。

社長も手をやいて、私に説明してくれないかと。

そこで見せたのが、この嘆願書。

https://www.tokyokai.jp/about/statement_pdf/news141226.pdf

 

一度保護を受けるために放棄したのだから、支払わないといけないのよ。

知ってた?

まあ、この弟のように資力があればどうってことないのだけどね。

この文書をみせてやっと納得してもらった。

 

ただ、この話には後日談が。

施設で弟と施設長から現金を預り、社長と兄で市役所へ。

お世話になりましたと係りの方に清算をお願いしたら、なんと。

 

なんと。

 

支払わなくてもよいことに。

 

何てこと。

 

どうして。

 

私は聞いて知りましたが、せっかく0円にしていただいたので、内緒に。

 

現金を持ち帰ると施設長も驚いて。

 

兄弟、実家、社長だれひとり欲をかく人がいないと

こんな奇跡も起きるのかと。

 

私も一安心。