トム-ジョード

まあ死ぬまで忘れない主人公の名前だろうか。

前回の「考えることをやめたのか」からひきつづき宗教観のような話。

中2の国語の先生。おそらくはアラ40の女性で独身だったと記憶しているが、名前は忘れてしまっている。

中1の時は「老人と海」が教材で、反戦の美術の先生。

そして中2は「怒りの葡萄」が教材の反政府の国語と古典の先生。

どうせこんな僻地に飛ばされてくるような先生だもの、おそらくは学生闘争で目立ちすぎたのだろうと生徒たちは噂していたのです。

スタインベックの本を始めてみたのはこのときでした。

読んだのではなく、見たのはです。

4ヶ月かけて一冊の本から、一部分づつ抜粋して漢字から文法まで織り交ぜて授業をするのですが、田舎の漁村の子供にとっては、どうも自分たちを哀れんでいるような内容に

覚えてさほど熱心にはなれなかったというより、拒絶に近いものがあった気がします。

そして数ヶ月が経ち案の定、読書感想文を書かされるのですが

次回何ページまで読んでくるようになんていわれても、まったく読まなかったものでストーリーすらままならない状態で。

そんな時に、やってしまったのです。水曜ロードショーで。「怒りの葡萄」が。

見てから即効で感想文400字詰めを2枚半。

おそらくは、労働者階級の立場にたってその苦悩を読み取らなければならなかったのだろうけど、私のは真逆で。トムジョードは所詮犯罪者で、日本の農業も変えていったほうがよいみたいな内容だったか。

職員室に呼ばれた。

「映画も見たんですよね。それでもこう感じるのですか?」

「はい。本も映画も同じです。」

私的には、どちらもエンターテイメントで人の心を動かせればしめたもんだと。

どちらかというと、映画のほうが大金かけて作っているのだから、その面では優れているに決まっていると。

「漫画もですか」

「はい」

まあ、隣の机が昨年の国語を教えていた美術の先生だったからアニメなど芸術ではないといわんばかりに。

けどどうでしょう現在、日本の製作映画興行収益のベスト3は全てアニメですから。

そんなことがあってから何十年。

この人の曲が。

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1995年でしょうか。

ブルース・スプリングスティーンの「The Ghost of Tom Joad」

まさかの、トム.ジョードの出現でした。

不況が始まり、まさに1930年のころと一緒のように労働者の叫びの声を歌う。

あらま。

スタインベックは黙示録を題材に怒りの葡萄を書き、55年後ブルース・スプリングスティーンは黙示録のことばを使って曲にした。

「最後の者が最初になり
  最初の者が最後になる」

55年後の感想文を書くとしたら

キリスト教は人を動かし、金を動かし、政治も動かせるんだ。

かな。

だれかから、お叱りをうけそうだ。