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青りんご「祝」 涼やかな青春の味
 ◇硬さと酸味、真夏に出回る新鮮さ


目に涼やかな青りんご「祝」。果肉は真っ白だ。奥にあるのは冷蔵ものの「ふじ」 「冷たい水おけのなかに浮かんだ青いりんご。幼稚園のころ、夏の軽井沢に行くたび、青りんごの『祝』を買ってもらうのが楽しみでした。あの硬くて甘酸っぱい味が懐かしい」と東京都稲城市の主婦、越川映子さん(52)。夏を迎えるたび、果物屋さんをのぞくが「なぜか見つからない」と言う。完熟の2文字が受ける時代、未熟を思わせる青いりんごは時代遅れ−−なのか。夏の盛り、清涼感をまとって顔を見せた「祝」を求め、りんご産地の信州に向かった。【津武欣也】

 「青りんご」の思い出は、なぜか夏山につながる。学生時代、槍(やり)ケ岳(がたけ)でかじった青りんごはおいしかった。山小屋の水おけに浮かんでいた1個をカリッと一口。酸っぱさがシュワーと広がり、汗とともに疲れまでもが一気に引いたように記憶している。そんな青りんごが、旧盆のころになると街の果物屋さんにも並んでいた。40年前の思い出である。

 甘さでなく、酸っぱさで心に残る青りんご。昔のりんごを探して、知り合いの小諸(長野県)のりんご園に電話を入れると「青りんごの産地は昔の共和村(現長野市篠ノ井)。うちにも10本ほどあるが、市場には出していない」という。早速、長野市に向かった。旧共和村はJR長野駅から車で20分。篠ノ井地区に入ると、道路わきに青いりんごが見えてきた。それも住宅と肩を寄せ合う形で、どこの庭にもりんごの木が植わっていた。

 「あの青いりんごは『つがる』。8月中旬には真っ赤に色づきます。青りんごの『祝』は袋を掛けていますから」と共和園芸農協組合長の太田宗弘さん(64)。主力品種の「ふじ」や「つがる」はすべて無袋だが、緑の肌色が生命の「祝」は裂果と葉ずれによるキズ防止のため袋をかぶせて栽培していると話す。車から見えた青りんごは「祝」ではなかった。

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 昔のりんごは、やはり苦闘していた。同農協管内のりんご畑150ヘクタールのうち、「祝」の栽培面積は約1・2ヘクタール。出荷量で見ても昭和50年代の6万箱(8キロ入り)の20分の1に減っている。「りんごのトップバッターを担ったのが『祝』。真夏に出回る青りんごは消費者にとっても新鮮だった。それが冷蔵技術の発達で、赤いりんごが年がら年中ある。旬の感覚がなくなったのです」と太田さん。同じ早生りんごでも、赤くなる「つがる」に人気の座を奪われたという。

 同地区で最も「祝」を作っている平林勝三郎さん(68)の畑を訪ねると、樹齢30年の「祝」が若木の「つがる」に交じって23本あった。幹の太さは直径25センチほど。どの実にも半透明の袋が掛けられ、収穫を待っていた。「袋掛けから約2カ月で収穫できる手間のかからないりんごです」と妻の近子さん(67)。収量は1本当たり平均5箱(18キロ入り)で、今年の出来は平年並みという。

 収穫は7月初旬から8月中旬。早い時期に収穫する「祝」は、お盆のお供え用で、この場合は未熟な状態で収穫するため、渋みがあり食用には適さない。「甘酸っぱい味になるのは7月下旬から」と話す近子さんに気になることを聞いた。

 「完熟すると青りんごも赤くなるのですか?」。答えは「熟しても果皮は緑のまんまですよ」。だが、組合長の太田さんによると「日の当たる枝では黄色を帯びた実に、赤かピンクの縦じまが入ってくる。完熟の『祝』は甘く、ジューシーで本当にうまい」。ただ、過熟になると逆にスカスカ。この見極めが難しく、完熟した青りんごの味を知る人は産地でも少ないと話す。

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 帰路、青いりんごを手に、忘れかけていたメロディーを口ずさんだ。70年代初め、デビューしたばかりの野口五郎が歌っていた「青いリンゴ」。

 −−♪青いリンゴを抱きしめても 思い出さえ帰らない〓

 彼は10代だった。青りんごに青春の思い出が重なって、無性に悲しくなった。若かった私も−−還暦を過ぎた。

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 ■購入など問い合わせ

 共和園芸農協直売所(長野市篠ノ井岡田1157、電話026・292・1300 ファクス026・292・8355 午前8時〜午後5時受け付け)。価格は4キロ箱入り(20〜25個)2200〜2700円、送料別。8月5日まで受け付ける。

サイパンのゴルフ場で食べたのが、最後かな。

記事を読むと、本当につくっている農家が少ないのがわかる。

早速電話。

よかった、まだあった。

5キロおとり寄せ。