気をつけよう

精神科医、国際医療福祉大学教授・和田秀樹 アルコール依存の怖さ侮るな   
◆「よくある話」で済まぬ

最近、酒にからんだ有名人の失態がマスコミを騒がせることが多い。若者に人気のタレントが泥酔して公然わいせつ容疑で逮捕され大きなスキャンダルとなった。私も精神科医としてこの騒動についてコメントを求められることが何件かあった。その際の重要な見落としを尊敬する精神科医から指摘された。これを深く受け止めて自戒の意味も込め、その見落としについて書いてみたい。

 それは、こうした酒の上での失態の場合、本人はもちろん周りにいる人たちを含めてどのように対処すべきかということである。日本人はともすると、酒にまつわる失敗には甘いところが見られる。今回のタレントの事件でも、酒の席ではよくある失敗としての同情論が少なくなかった。

 私が言いたいのは、処罰が不十分であるということではなく、われわれ精神科医の目から見て、こうした状態になれば、治療開始、あるいは断酒も必要だということである。

 確かに、今回のタレントには周囲に気をつけてくれる人がたくさんいるだろう。本人の反省の意思も強く、職を失いたくないという動機づけもあるだろうから、これ以上の問題を起こさないですむ可能性は小さくないだろう。しかし、もしも一般の人がマスコミ報道を通じて、この程度のことは酒の上での失敗でよくある話と思ってしまうことは、非常に危険な誤解なのだ。

 ◆深刻な心の病招くことも

 強調したいのは、今回のような問題を起こした人が周囲にいた場合、あるいは自分がそうした失敗を起こした場合には、既に治療が必要なレベルに達し、アルコール依存症との診断を受ける可能性が大きいということである。このくらいでアルコール依存症なのかと思われるかもしれないが、それは日本というより国際的な基準に準じた診断である。

 現在のアメリカ精神医学会の精神障害の診断基準では、7つの基準のうち12カ月の間に3つ以上で基準に当てはまると、物質依存(アルコールの場合はアルコール依存)とされる。その一つは、前と同じ量の物質では同じ効果が得られない、希望の効果を得るために前以上の量を必要とする状態になること。つまりアルコールを以前と同じだけ飲んでも酔えなくなるケースである。さらに最初に考えたよりも大量に、あるいは、より長い期間しばしば使用するという基準もある。だんだん酒量が増えていくという状態である。

 もちろん、飲酒で社会的問題を起こしたり、仕事に遅刻したり、二日酔いで仕事ができない、あるいは酔っていたときの行動をおぼえていないとか、まともな受け答えができないというのも基準に入る。このような問題を何回か起こしながら、断酒をしないという基準もある。

 報道内容からしか判断できないが、先のタレントの場合は、この3つ以上の基準にあてはまるのではないか。つまり、アルコール依存症の診断を受ける可能性があるのだ。このくらいで病気扱いすることに抵抗があるかもしれない。しかし、人が考える以上にアルコール依存は、深刻な心の病なのである。ここで治療を始め、場合によっては断酒をしないと、さらなる精神的、身体的、社会的問題を生じるからだ。

 2002年にWHO(世界保健機関)が行った自殺者の生前の状態の調査結果によると、自殺者の約18%が薬物乱用であり、その大部分がアルコール依存症だった。これは鬱病(うつびょう)に次ぐ大きな要因なのである。

 ◆悪循環で自殺の原因にも

 日本の自殺数は先進国で最も多いレベルであり、44歳までの男性の死因のトップだ。日本では年間3万3000人の自殺者が出ている。その15%がアルコール依存としても、5000人もの命を奪っていることになるのだ。飲酒運転を厳罰化しても、それがやめられない人のかなりの部分がアルコール依存だという推測も的外れなものには思えない。飲酒運転をなくすには、厳罰化だけでなく、治療や啓蒙(けいもう)も必要なのだ。

 先に述べたレベルで治療が必要なもう一つの大きな理由は、症状がさらに進行して、離脱症状が出てしまうと、アルコールがやめにくくなることだ。この離脱症状は禁断症状として知られるものである。その苦しさを逃れるためにアルコールに手を出すという悪循環が続くことになる。

 このレベルになると入院治療がほぼ避けられない。ブッシュ前米大統領は若いころにアルコール依存症の診断を受けていたが、40歳で断酒して、その後、州知事から大統領にまで上り詰めた。アルコール依存症の診断を受けることは社会的生命を失うことではない。治る病気であるのだ。

 しかし同時に、治療が必要な病気でもある。「あのくらいはよくあること」という誤解が蔓延(まんえん)するのは社会的な損失となる。正しい知識ときちんと治療を受けることの大切さが社会で共有されることを切に望みたい。(わだ ひでき)

その内、国内で販売されるアルコール類にもタバコといっしょのような、注意書きが書かれるかも。

例えば「飲酒は、あなたにとって○○病を悪化させ、飲酒運転、暴力、わいせつ行為、自殺行為などをさせる危険性を高めます」。

ただこんだけアルコールの宣伝多かったら、ねー。

適度に楽しく。

最近週末は、呑みません。せっかくのお休みがもったいなくなってしまうから。

よい子は、まっすぐ帰宅。

今日も自治会の集まり。

議題は、盆踊り。