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〜庶民金融が消える日〜
          
2006年12月13日改正貸金業規正法が参議院で可決、成立しました。これにより実質、消費者金融は大手中小も含め経営の存続を見直さなくてはならないこととなります。皮肉にもマイクロクレジットの創設者ムハマド ユヌス氏のノーベル平和賞授賞式の3日後でした。今回の法改正は多重債務を無くすことがその一番の目的です。ただ上限金利を下げ小規模業者の数を75%減らし規制を強化して多重債務者は減るのでしょうか。本当の意味で消費者を守る法律になりうるのでしょうか。
□ 私見的近未来予想(フィクション) 
〜大手の場合〜
2006年2月から消費者金融、クレジット会社の株価は下がり続けています。株価の低迷は長引くと企業の信用力を低下させ市場から資金を調達しづらくさせていくと同時に、敵対的買収の危機にさらされることになっていきます。それにも増して過払い金などによる収益の悪化でなおも株価が下がるようであれば、ハゲタカと呼ばれるファンドの格好の餌食になりえます。
企業はそれに備える為経営基盤の強化策に自社株を買い進め持合をはじめます。そして合併を繰り返し、社員の70%を解雇します。
〜中小の場合〜
自社が保有する債権の大売出しが始まります。2006年夏頃は、60%ぐらいをつけていた債権は年が明けて一部法律が施行されると大暴落を起こします。20%を切るようになると大手金融卸問屋が保有している金融会社向け債権がもはや紙切れとなり倒産します。ここに最大の危険が潜んでいるように思います。売れ残った債権は、規制を逃れる為、投資組合をトンネルにして危険な団体が経営するサービサーに流れていきます。
〜小規模の場合〜
債権を売ろうにも売り先も無く、細々と回収を続け生計の為、担保を持つ顧客にのみ貸付をしていきます。地元の顧客ばかりなのでさほど過払いの恐怖もなく、次の新法ができるまでの間じっと冬眠し続けます。ただ、地元ゆえに今まで正常取引をしていた顧客に貸さなくなったことで非難を浴びます。「金持ちにしか貸さないのか、庶民金融が聞いてあきれる」と玄関に張り紙を張られます。施行前は、法改正で小規模業社は廃業に追い込まれるというのが大方の予想でしたが、ある意味一番被害を受けずにすみました。
私個人の予想などどうでもいいのですが、貸金業の上限金利の段階引下げに対して1995年から警鐘を鳴らして、現在の闇金、過払い返還についてずばり予想していた経済学者がいることを教えていただきました。
□ 専務理事から頂いた本
「消費者信用法の理論」 竹内 昭夫 著
この本の中で消費者金融における金利規制の在り方について論じているところがあります。そこで紹介されているアメリカで1969年に統一消費者信用法典が作られるときの立法目的は、ある意味感動さえ覚えました。
1. 市民の間には小口金融に対する広範な需要がある。
2. 担保無しで行われる小口金融実行と回収の為の費用は必然的に高くなる。
3. 小口金融は、暴利規制に関する現行法の定める制約の下では利潤を上げることができない。この制約で法を守る事業者を小口金融の分野から締め出した。その結果小口借主が高利貸しなどの連中の犠牲になってきた。
4. 公共の福祉を保護する為この種の金融を規制する法律が必要である。
ここまでは、日本の政府となんら変わりないのですが、ただ出来た法案は、免許を受けて合法的に小口金融業を営もうとするものには、usury law(暴利規正法または利息制限法)の制限をはずして一定限度(その事業から利益を上げるに足る高い料率)までの利息徴収を認めることが、小口の庶民金融の健全化のため必要であるという方針をとっている。日本の法律はこの部分を全く無視して作られていると述べています。
□ 誰の為の法律
全体の20%といわれている多重債務者を救う為に80%の正常利用者を無視し、大勢の失業者を出し、巧妙かつ複雑な犯罪を作り出すことにはならないだろうか。法律を維持するのにはお金がかかります。冷え込んでしまった消費者金融業界からの税収を期待出来なくなった時、そこに税金を投入することに国民の理解が得られるでしょうか。
□ では、どうすれば?
更なる法改正を期待する。新法成立を目指す。特区をつくり小口庶民金融を存続させる。どれも夢みたいな話に聞こえるかもしれませんが、しかし実際にもう活動をし始めている方たちが
存在します。我々の職業は世間的にいえばあまり理解を得られる商売でないことは事実です。しかし需要がある限り、なくならない商売であることも否定できないはずです。協会に加盟して10年になりますが、同業の諸先輩方と意見を交換できたのは、自分にとって大きな財産であったと思います。現在の協会がなくなったとしても、何とか経営を存続させようとがんばっている方々と活動をともに出来たらと思います。庶民金融の火を消さない為に。